
電子化の目的は単なる省スペース化ではありません。省スペース化を目的に電子化をスタートしようとすると、あまり使わない文書も電子化することになり、コスト負担が増大する可能性が高まります。そのようなことにならないためにも電子化の目的を明確にし、電子化対象文書は必要最低限の文書に絞り込むことが重要です。
必要な資料をすぐ探せるようにする
社内の情報共有を活性化する
原本劣化による情報喪失のリスクを減らす
リモートワークを可能にする
法令対応や監査対応を容易にする
電子化を検討する際にはこうした目的を内部で話し合い、整理をしてから取り組むことが望まれます。
電子化は「活用」ということを視野に入れて進めなければなりません。そのためには電子化の計画=仕様をきちんと設計しておくことが重要です。PDFの品質は「スキャン後」ではなく、電子化前の設計段階でほぼ決まると言っても過言ではありません。
解像度
一般文書であれば300dpiくらいが目安になります。解像度が低すぎると文字が潰れ、判読性が低下します。OCR処理をする場合は解像度が低いと識字率も下がります。一方高すぎるとファイル容量が肥大化し、保管や共有に支障が出ます。重要なのは、「高ければ良い」ではなく、用途に応じて最適化することです。
OCRの有無
OCRとは画像化された文字をテキストとして認識し、検索可能にする技術です。近年ではAI-OCRの技術も進化し、様々な様式の文書でも精度が向上してきています。契約書や申請書類、技術資料などの検索性が向上することが期待できます
ファイル名
ファイル名の付け方は検索効率に大きく影響します。後で管理不能にならないよう一定ルールを設けることが必要です。
例:20260401_〇〇業務委託_XX会社
最近ではOCR処理をした情報から、AIの技術を用いてファイル名を付与することに可能になってきました。わざわざ手入力をしなくても、効率的にファイル名を付与することができます。
ストックされた過去の文書を一気に電子化する場合、理想を求めすぎると電子化がなかなか進めない、コストがかかりすぎる、あるいは挫折して失敗に終わる恐れがあります。こうしたことを経験した企業から相談をいただくことがとても多くあります。ストック文書を電子化するような場合は、なるべくシンプルな設計にすることがポイントです。
PDFのファイル作成単位:「原秩序尊重の原則」
どの単位でPDFを作成するか、悩まれることがあるのではないでしょうか。起案1件単位、途中途中に挟まれているインデックス単位など、様々な選択肢があります。しかし過去の記録を電子化する場合には、「原秩序尊重の原則」というものがあります。紙文書が綴じられているバインダーなどの1冊を、一つのPDFにするという原則です。これは、「作成者が実際に使っていた時の並び順には、その組織の活動実態や意思決定のプロセスが反映されており、並べ替えてしまうと、その歴史的な文脈が失われてしまうため、元の配列を維持する」という考え方です。何らかの単位でファイルを分割することにより検索性が高まることもありますが、
・どの書類の次にどの書類が綴じられていたかが、当時の業務の流れを証明できなくなる
・作成当時の分類体系がわからなくなり、資料の関連性を追えなくなってしまう
といった事態を避けるため、このような考え方があります。ストック文書を大量に電子化する場合には、バインダーなどの1冊=1PDFといったシンプルな設計にすることをおすすめします。
細分化してもっと精緻な検索をしたいという場合には、(契約書や図面など)ターゲットを限定して文書管理システムで管理するとよいでしょう。
フォルダ構成
PDF管理ではフォルダ構成も重要です。フォルダが無秩序にあると、これもまた検索性の低下を招きます。電子化とフォルダ構成の設計はセットで考える必要があります。しかし大量に紙からPDF化をする場合、文書ごとに細かなフォルダ構成を設計し分類することは、負担の面から考えても現実的に難しい部分があります。共有フォルダ上にすでに存在している分類に合わせて格納していく作業も、かなり無理があります。過去の文書を一気に電子化するような場合、PDFの格納先として「アーカイブ領域」(記録用領域)のフォルダを設けて格納することをおすすめします。その下の階層に「部署名」や「年度」などのフォルダを設けて管理するとよいでしょう。現役のファイルと、電子化するような(使いはするが)過年度分のファイルとは棲み分けて保管するというルールにすることで、電子化をスムーズに進めることができます。
電子化でよくある失敗が、「まず全部スキャンしてから考える」という進め方です。
特に大量文書では、最初に仕様を設計するかどうかがコストを左右します。PDFの利便性は単に電子化したかどうかではなく、どのような仕様で電子化したかによって決まります。
その一方で、あまり理想を追い求めすぎても電子化は進みません。ある一定のルールを設けてシンプルな設計にすることで、利便性を失うことなく電子化を成功させることができます。
これまで示してきた仕様をきちんと設計することで、PDFは「保管データ」ではなく、「活用できる情報資産」になるので、ぜひ参考にしてください。
電子化のことで悩まれている方はこちらからご相談ください。
文書管理コンサルティングチーム/鈴木
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