
社内の共有フォルダを開いたとき、「どこに保存すればよいかわからない」「同じようなファイルがいくつもある」「フォルダ構成が把握できずに探せない」「どれが最新版なのかわからない」といった状態になっていないでしょうか。
共有フォルダは、最初にきれいなフォルダ構成を作るだけでは、整理された状態を維持できません。保存場所やファイル名、アクセス権、保存期間、削除方法などについて、組織共通の運用ルールを決める必要があります。
また、運用ルールを作っても、管理する人や見直すタイミングが決まっていなければ、時間の経過とともに例外が増え、再びフォルダが散らかってしまいます。
この記事では、共有フォルダを整理された状態に保つために決めておきたい6の運用ルールを、具体例とともに紹介します。あわせて、ルールを社内に定着させるためのポイントや、生成AI時代に共有フォルダ管理が重要になる理由についても解説します。
共有フォルダの運用ルールとは、単に「ファイルをどこに置くか」を決めるものではありません。
誰が、どの文書を、どこに保存し、どのような名前を付け、どのくらいの期間保管し、不要になったときにどう処理するかまでを組織として決めるものです。
特に利用人数が増えるほど、「各自がわかりやすいと思う方法」で保存するだけでは、全体としては使いにくい状態になっていきます。
共有フォルダに共通ルールがない場合、さまざまな問題が起こります。
たとえば、同じ意味のフォルダが複数作成されたり、担当者ごとに異なる場所へファイルが保存されたりすると、必要な資料を探す時間が増えます。「最終版」「最新版」「最終版2」といったファイルが複数存在し、どれを使えばよいかわからなくなることもあります。
さらに、異動した社員の名前が付いたフォルダがそのまま残っていたり、何年も使われていないファイルが蓄積したりすれば、引き継ぎや情報共有にも支障が出ます。
アクセス権の見直しが行われていなければ、本来見る必要のない人がファイルを閲覧できる状態が続く可能性もあります。
つまり、共有フォルダの乱れは、業務効率、情報共有、引き継ぎ、情報セキュリティなど、組織のさまざまな活動に影響します。
共有フォルダを整理することと、運用ルールを作ることは分けて考えましょう。
運用ルールは、どのように整理するかを決め、その状態を維持する仕組みです。一方、整理とは、現在のファイルやフォルダを見直し、ルールに基づいて不要なものを削除し、同じ種類のものをまとめて整えることです。
共有フォルダを一度きれいに整理しても、保存期間や削除の基準といったルールがなければ、また元に戻ってしまうでしょう。
そのため、共有フォルダを整理するときは、「どう整理するか」だけでなく、「誰が管理するか」「いつ確認するか」「どのような基準で見直すか」まで考えることが重要です。
共有フォルダの運用ルールで、特に決めておきたい6のルールを紹介します。

最初に決めたいのが、「共有フォルダに何を保存するのか」です。
保存対象が曖昧なままだと、業務上重要な文書から個人的なメモ、一時的に作成したコピーまで、あらゆるファイルが共有フォルダに集まってしまいます。
たとえば、組織として共有すべき業務文書、正式に作成された資料、プロジェクトの成果物、後任者が参照する必要のある資料などは、共有フォルダに保存する対象として考えられます。
社内で何種類かあるファイルの保存先の保存方針を決めることをおすすめします。
以下は、多くの企業で採用されている例となります。
・共有フォルダ:組織として保存しておく文書、共同プロジェクトの文書
・個人PCやOneDriveのような個人のクラウド領域:個人の手元においておきたいもの、下書きやメモ
・契約書管理システム:契約書・覚書
このように保存方針を決めて、保存対象を明確にすることで、不要なファイルの増加を抑え、必要な情報を探しやすくできます。

フォルダ構成を決める際は、同じ階層で分類の基準をそろえることが重要です。たとえば、営業部の共有フォルダを次のように分類するとします。
この例では、「業務」という同じ考え方でフォルダが分類されています。
一方で、「見積書」「2026年度」「田中さん」「プロジェクトA」のように、文書種類、年度、個人名、案件名が同じ階層に混在すると、利用者はどこに保存すればよいのか判断しにくくなります。
利用者が保存場所を判断しやすいこと、同じ階層の分類基準が統一されていること、必要以上に階層が深くならないことのほうが重要です。

フォルダ名やファイル名は、利用者が中身を開かなくても内容を推測できるようにしておきましょう。
たとえば、ファイル名を次のように取り決めておく方法があります。
20260901_○○株式会社_提案書_v01.pptx
この場合、「日付」「取引先名」「文書種類」「版数」がファイル名から判断できます。
ルールとしては、日付を「YYYYMMDD」で表記する、文書種類を入れる、案件名または取引先名を入れる、必要に応じて版数を付ける、区切り文字を統一するといった方法があります。
一方で、「資料.xlsx」「最新版.pptx」「最終版.docx」「最終版2.docx」のような名前では、内容が推測できず検索性も識別性も高くありません。反対に、ファイル名に情報を詰め込みすぎると、命名そのものが負担になり、ルールが守られなくなることがあります。
「利用者は普段、何を手掛かりにファイルを探しているのか」を考え、自社に必要な項目だけを命名規則に含めましょう。

共有フォルダのアクセス権は、人事異動、組織変更、担当変更、退職などに合わせて見直す必要があります。
少なくとも、「誰がアクセス権を付与できるのか」「閲覧と編集の権限をどう分けるのか」「異動者の権限をいつ変更するのか」「退職者の権限をいつ削除するのか」「社外との共有を認めるのか」といった点は明確にしておきましょう。
アクセス権について重要なのは、「必要な人だけが必要な情報にアクセスできる状態」を継続的に維持することです。そのためには、定期的に権限を確認する仕組みも運用ルールに含めておく必要があります。

共有フォルダが乱れてしまう大きな原因の一つが、ファイルやフォルダを「削除してよいかわからない」ことです。その結果、「念のため残しておこう」という判断が積み重なり、不要なファイルが増えていきます。
そこで、文書の種類ごとに保存期間や削除の考え方を決めます。
文書には、法令や社内規程などに基づいて一定期間保存する必要があるもの、業務上一定期間残しておくもの、長期的に保存するもの、一時利用後に削除できるものなどがあります。
多くの企業では文書管理規程があり、そこに文書の廃棄についても取り決められていますが、文書種類ごとの保存期間がわからなければ実行することができません。文書によって法令上の保存期間や業務上必要な期間は異なります。法令や社内規程の対象となる文書については、担当部署や規程を確認したうえで保存期間を決める必要があります。

共有フォルダを長期的に維持するうえで、特に重要なのが管理責任者と定期点検です。
ルールを作った直後はきれいな状態でも、時間が経つと新しい業務やプロジェクトが発生し、組織も変わります。そのたびに例外的なフォルダが追加され、不要なファイルも増えていきます。
そこで、文書管理体制を整えて定期的な点検が実行できるようにしておきます。
以下は運用例の一つです。
組織変更や業務内容の変化に合わせて、フォルダ構成や運用ルール自体も定期的に見直していきましょう。
運用ルールを作ったにもかかわらず、しばらくすると元の状態に戻ってしまうケースがあります。ルールが守られない原因となる5つを説明します。
ルールは「厳密であること」より、「日常業務で無理なく守れること」を重視しましょう。
管理部門から見ると整然としたフォルダ構成でも、利用者が保存場所を判断できなければ機能しません。実際の業務の流れや、社員がどのように情報を探しているかを踏まえて分類することが重要です。
定期的に確認し、不要なものを整理し、ルールを見直す体制が必要です。
共有フォルダを整理してもすぐ元に戻ってしまう、自社に合った運用ルールを決められない、といった課題がある場合は、文書管理の専門家による現状調査やルール設計を活用する方法もあります。
生成AIや社内検索の活用が広がるほど、AIに何を参照させるかという「情報の整理」が重要になります。AIを導入すれば、散らかった共有フォルダの問題が自動的に解決するわけではありません。
むしろ、参照元となる文書を整えておくことが、AIを有効活用する前提になります。
同じ内容のファイルが複数存在し、その中に旧版と最新版が混在している場合、AIや検索システムが常に利用者の意図どおりに最新版だけを選択できるとは限りません。人間が見ても「最終版」「最終版2」「最終版_修正」と並んでいれば迷うのと同様に、AIに参照させる情報についても、どれが正式な文書なのかを明確にしておくことが重要です。
版管理やアーカイブのルールは、AI活用の観点からも重要になります。
検索対象の中に、古い文書、重複ファイル、一時ファイル、不要なコピーなどが大量に存在すると、必要な情報を見つけにくくなります。AI検索を導入する前に、どの文書を参照対象とするのかを整理し、不要な情報を減らしておくことが望まれます。これはAIだけの問題ではなく、通常の全文検索や社内ポータルでも同様です。
情報を探す仕組みを高度化する前に、検索対象となる情報そのものを整えることが重要です。
AI活用時には、アクセス権の考え方も重要です。
すべての社員が閲覧できない機密情報や個人情報まで、無条件にAIの参照対象にするべきではありません。利用するAIや検索基盤の仕様を確認し、既存のアクセス権とどのように連動させるか、どの情報を参照対象とするかを設計する必要があります。
共有フォルダの運用ルールは、人間が探しやすくするだけでなく、AIが活用しやすい情報環境を整えるためにも重要になっています。
最後に、自社の共有フォルダ運用を確認してみましょう。
□ 共有フォルダに保存する対象が決まっている□ フォルダ構成の基準が決まっている□ フォルダを作成できる人が決まっている□ ファイル名の命名規則がある□ 正式版・最新版を識別できる□ 一時保存場所のルールがある□ アクセス権の管理者が決まっている□ 保存期間・削除基準が決まっている□ 終了案件をアーカイブしている□ 共有フォルダの管理責任者がいる□ 定期的な棚卸しを実施している
チェックが付かない項目が多い場合は、個別のファイルを整理する前に、共有フォルダ全体の運用方法を見直したほうがよいかもしれません。
特に、「管理責任者」と「定期点検」が決まっていない場合は、一度整理しても元の状態に戻りやすいため注意が必要です。
共有フォルダを使いやすい状態に保つためには、保存対象、フォルダ構成、ファイル名、版管理、アクセス権、保存期間、削除、アーカイブなどについて、組織共通の運用ルールを決める必要があります。
ただし、ルールを作るだけでは十分ではなく、「誰が管理するのか」「いつ点検するのか」「どのタイミングでルールを見直すのか」まで決めて初めて、整理された状態を継続しやすくなります。
「どこから手を付ければよいかわからない」「過去に整理したものの、再び散らかってしまった」「全社で共通するルールを作りたい」といった場合には、まず現在の文書や共有フォルダの状態を把握するところから始めましょう。
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文書管理コンサルティング/石川
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