文書保存年限はどう決める?その考え方とは?

2022-3-11
文書管理ルールは文書管理規程を頂点とし、段階的な構造となっていますが、その下位層に位置づけられる具体的なルールは、個別の文書がどう扱われるべきかというルールになります。そこには保存年限のあらわされます。今回はその文書保存年限を決める考え方について説明します。

文書の保存年限はどうやって決まる?

文書の保存年限はどう決まるのでしょうか。
保存年限を決定する最優先の要素は、「その文書が属する業務に関する法律」となります。次に「訴訟リスクへの対応」があげられるでしょう。これらは、自社だけでは決められない外的な要因によるものとなります。

その次に、自社が決める価値によって決まる保存年限があります。これは、「知的資産として残しておくべき価値のある」場合や、「歴史的価値のある」場合などになります。

では具体的にこれらを見ていきましょう。

■業務に関連する法律

企業の業務は多岐に渡り、その業務に関連した法律によって保存年限が決められているものがあります。ここではどの企業でも共通の総務系の文書を例にあげてみましょう。

経営関連の文書

  ・取締役会議事録 10年(会社法371条)

設備関連の文書

  ・消防設備点検書類 3年(消防法17条)

そして、各業務に関連する文書では個別に対応する法律があり、それによって保存期間が決められています。業務単位でリスト化をし、管理しているものを可視化しておきましょう。

■訴訟リスクへの対応

訴訟リスクがある場合、関係文書はその保存期間を終えて処分の段階になったとしても、取り置いておかなければ、証拠を残せなくなってしまいます。この取り置くことを「ホールド」と言います。日本語では「そのまま!」という意味となりますが、いかにもイメージできる言葉になっていますね。

■知的資産としての価値

これは何も特許などの公的に通用する知的財産に限ったものばかりではありません。その企業が営んできた業務が生み出した記録やノウハウです。下記に例をあげてみます。

業務記録

  ・営業記録

  ・顧客リスト

  ・プロジェクト実行時の記録

ノウハウ

  ・業務マニュアル

  ・研究発表会の発表内容

  ・機器の設定記録

  ・実験データ

法律などの外的要因で決められるものでは無いのでそれぞれの企業で決めることになりますが、いつまで利用されるかどうかが保存期間を決めるポイントになります。

■歴史的価値

最後に歴史的価値について説明します。

ビジネスアーカイブとして歴史的価値のある資料を保管している企業は、日本ではあまり多くないようです。しかし、海外においてはビジネスアーカイブを設置して有効活用している事例が見られます。

具体的に歴史的価値のある文書の例をあげてみましょう。

  ・過去のプロジェクトの記録

  ・過去の製品開発の記録

  ・製品の歴史

  ・企業の歴史(創業時の写真、看板、訓示など)

これらの活用方法は、業種にもよりますが、以下のようにビジネスアーカイブに積極的な企業は以下のように活用しています。

・会社の歴史を知るための資料として活用し、社員のエンゲージメントを深める

 → 新入社員が創業の精神を知る

・過去に直面した問題の解決方法を手本にして、現状打開策の参考とする

 → 会社経営を揺るがすほどの危機にどう対処したかを知る

・企業ブランディングに利用する

 → 過去の製品ラベルやロゴの復刻

このように保存年限を決める要素を4つ(業務に関連する法律、訴訟リスクへの対応、知的資産としての価値、歴史的価値)を見てきましたが、これらの要素が同時に当てはまる場合もあります。
その場合は、まず、法律で決められている保存期間を押さえた上で、それ以外の要素を検討するようにしてください。

例えば、「取締役会議事録」は会社法で10年と決まっています。一方で業務上は15年必要だとすれば、保存期間を15年にするという考え方です。


文書保存年限の管理方法とは?

次に文書保存年限の管理方法です。文書保存年限の決め方はわかったとしても大量にある文書なので統一した管理を行う必要があります。管理に抜けや漏れがあってはなりません。

■ライフサイクル管理

企業が保存する文書に対してライフサイクル管理を行います。ライフサイクル管理を行うには分類基準表や文書管理台帳を作成します。

分類基準表には分類単位に保存期限を明記します。これによってどんな分類が何年保存なのかわかるようになります。一方で文書管理台帳では、簿冊やフォルダ単位に保存期限を明記します。文書管理台帳は紙文書に適切な管理の方法です。電子文書では詳細になりすぎることがあります。

以下の記事では、紙文書のライフサイクル管理について説明しています。
以下の記事では、電子文書のライフサイクル管理について説明しています。

■文書の処分と選別

文書の処分は、毎年年度末が過ぎたら実行します。その時に保存期限を過ぎている文書については、選別を行います。選別については、以下の選択肢があります。

・保存期限を過ぎた不要文書として廃棄
・訴訟などの理由で「ホールド」となっている場合は保存期限を延長
・保存期限を過ぎても業務上の価値があるものは保存期限を延長
・保存期限を過ぎて業務上の価値はなくなったが、歴史的観点から保存する価値のあるものは歴史的資料として取扱う


誤廃棄の無いように慎重に実行する必要があり、廃棄となった文書の一覧を作成し、上長の確認をもって廃棄するのが一般的です。


■文書の責任部署変更

文書の処分と選別の際に文書の責任部署が変わることがあります。

紙文書の場合は、利用頻度が少なくなったものを家賃の高い執務室におかず、外部の倉庫や建屋内の書庫などに保存期限が満了するまで保存することがあります。特に法律で保存期限が決められている文書にこういったケースが多いのではないでしょうか。

このタイミングで文書が総務管轄になる組織もあります。

また、歴史的資料となった場合には、ビジネスアーカイブ専門部署である企業ライブラリや資料館、社史編纂室などに移行されます。


電子文書の保存年限

最後に電子文書の保存期限について説明します。

■電子文書の保存でペーパーレス化を実現

もともとある紙文書をスキャンして作成した電子化文書やコンピュータアプリケーションで作成したファイルを電子文書を保存対象とすればスペースの圧縮もできますし、紙に縛られない働き方が可能となります。つまりペーパーレスを実現できるということです。

■ポイントは、法的要件の確認

社内利用だけで完結する場合は、電子文書での運用は社内ルールでフォローできますが、外部要因での保存、特に、法定保存文書に関しては、慎重に行う必要があります。

法律によって電子化要件が異なるのです。該当文書の根拠法と照らし合わせて確認してください。

管理している文書に対してすべてこれを実行するのは大変ですが、逆に言えばこれをすることによって安心して電子で保存することができるようになります。

以下の記事では、電子文書の原本性を確保するための各要件について解説しています。

■■ まとめ ■■

保存年限を決めるポイントは、業務に関連する法律、訴訟リスクへの対応、知的資産としての価値、歴史的価値の4つです。

決定した保存年限は必ず分類基準表や文書管理台帳などで可視化を行い、時期を見て評価選別を実行します。この時、必要であれば保存年限を延長することもできます。

電子文書に対しては、法的要件を確認することで文書の電子的保存が可能となります。

ペーパーレスやDXを視野に入れた形での文書保存を目指すことをお勧めします。

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文書コンサルティング/石川

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