リスクが潜む文書廃棄

ペーパーレスに向かい、文書を大量に廃棄する機会が多くなっています。文書のライフサイクルの最終ステップが「廃棄」です。廃棄は、目の前から無くなって終りではありません。間違いなく安全に捨てることがポイントです。ここではそれらのリスクを認識し、その対策を説明します。

廃棄文書情報による情報漏洩

映画「アルゴ」を観たことがありますか?(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
この映画は、1979年に発生した「イランアメリカ大使館人質事件」を題材に作られました。アメリカ大使館は、イランの学生たちにあっという間に占拠されてしまうのですが、大使館内の大使館員等は短時間に機密書類を焼却したりシュレッダーにかけたりして何とか処分することができました。しかし、このシュレッダーにかけた書類の多くが復元されてしまいました。

その頃のシュレッダーは現在と異なり、紙を細長い5mmくらいの短冊にカットするものでした。イラン側は、この紙を集めて子どもや主婦を使って復元させました。いくら当時シュレッダーは短冊型にしても、1本ずつ比較しながらつなぎ合わせていくのは、気の遠くなるような作業ですが、国情が違えば可能なのを見せつけられた思いでした。

結果的に機密情報が復元されイラン側の手に渡ることとなりました。
この出来事があって、シュレッダーで処理されたは短冊型をさらにカットし細かくするようになったそうです。

このように廃棄文書には重要な情報が含まれており、うかつに廃棄できないのはみなさまも認識されていることと思います。

ペーパーレス化で大量の廃棄文書が発生

今現在はオフィス改革や働き方の見直しが進み、ペーパーレスへ向けた活動を行ったり検討したりしている企業は多いことでしょう。そうなってくると一度に大量の廃棄文書が発生することになります。

また、ペーパーレスオフィスでも、打ち合わせやデータの確認等で文書を紙に印刷して使用するペーパーバリュー的な使い方も行われ、日常的な廃棄が行われています。

また、安全に捨てなければばならないのは、紙ばかりではありません。データの入ったDVDなどのメディア、USB、ハードディスクやPCなども安全に捨てなければデータは漏洩してしまいます。電子データは紙文書よりも漏洩するインシデント数は少ないのですが、一度のインシデントで大量のデータが漏洩します。
下のグラフは、日本ネットワークセキュリティ協会の調査結果で、情報漏洩の媒体は紙が圧倒的に多いことを表しています。
NPO日本ネットワークセキュリティ協会
「2016年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」

正しく廃棄する

紙文書やデータの入っているメディアは正しい廃棄はどのようにすればいいのでしょうか。
正しい廃棄方法以下に示します。

  1.機密に係わることが記載されている文書はシュレッダーにかける。
  (社内で取り扱っている情報は公になっている情報以外は社外秘となる。)
  2.CDROMやDVDROMは専用シュレッダーにかける。
  3.メモであってもそのままゴミ箱に捨てることはなく、
    字が読めないように破ったり、シュレッダーにかけて捨てる。
  4.個人情報の含まれている文書は特に慎重に扱う。
   (会社指定の廃棄ボックスを用意しているところもある。)


これらは、全社において実行されるように周知されなければなりません。

一方的にその方法を伝えてもなかなか浸透しないこともあるため、廃棄文書情報の取扱についての簡単な質問を定期的に行うことをお勧めします。単に耳で聞くだけよりも一度自分に問うステップが加わるため、実行につながります。

※廃棄についてのルールを質問に置き換えてみた例

    1.機密に係わることが記載されている文書はシュレッダーにかけていますか。
    2.CDROMやDVDROMは専用シュレッダーにかけていますか。
    3.メモはそのままゴミ箱に捨てることはなく、
      字が読めないように破ったり、シュレッダーにかけて捨てていますか。
    4.個人情報の含まれている文書は会社指定のボックスに入れていますか。
社員それぞれが、たかが廃棄でもリスクのあることを認識することが事故の防止につながります。

誤廃棄防止のために

ここで2つのタイプの異なる誤廃棄の事例を挙げてみます。

■自治体A

個人情報が書かれた文書約3200件を紛失したと発表した。情報の悪用は確認されていないため、誤って廃棄したとみられる。
個人情報の開示請求があった文書を確認しようとした際、紛失に気付いた。外部からの侵入は考えにくく、誤って溶解処分した可能性が高い。
→ ライフサイクル管理が不適切であったと考えられます。

■民間B社

お客様情報(氏名、住所、電話番号)が記載された帳票を、本来シュレッダーによる裁断、又は焼却処理により廃棄すべきところ、その一部の帳票を手で破った上で、その自治体指定のものではないゴミ袋にて廃棄しようとしたことにより、廃棄物として回収されることなく放置された状態となったことから、その一部が散乱・紛失した。
→廃棄した人に正しい廃棄方法が認識されていません

自治体Aの事例は文書のライフサイクル管理の問題があるようです。また、民間B社は関係者に廃棄方法が認識されていません。

さらに、日常的な正しい廃棄とは別に、ペーパーレス化の活動や定期的な保存年限の確認の際にで大量に廃棄の出る場合は、文書管理主管部門が大量に出る廃棄文書に対応可能なように準備します。

・廃棄に回す文書についての社内的なルールの周知
    溶解する場合の文書箱に選別シールを貼るなど、
    区別の明確にして誤廃棄を防止します。
    廃棄文書をまとめる場所を周知し、廃棄予定の文書の紛失を防ぎます。

・文書のライフサイクルリスト(ファイル管理表)との確認
    ライフサイクルリストで保存文書の保存年限満了を確認します。
    また、廃棄するの場合は、ライフサイクルリストに廃棄の記録を追加します。
    これが文書を廃棄したという記録になります。

誤廃棄防止の工夫の1つとして、あるお客様の廃棄方法を紹介します。
それは、鍵のかかるキャビネットの一番下の段に蓋をしないで文書箱を置きます。そこに機密扱いの廃棄文書を日常業務の中で入れていきます。1週間毎にその部署の責任者がその箱の中身を確認します。廃棄しても問題がない文書はそのまま廃棄へ、問題のある文書は担当者に戻します。問題のある文書の理由は多種あるため、部門責任者と業務担当者で確認をし合うとのことでした。

文書管理体制を作る

今まで説明をしてきたように、単に捨てるということであっても、文書の廃棄は全社的に統制しないとリスクは低減しません。そのためには、文書管理体制を構築して機能させることが重要です。

リスクに強い企業とするため、文書管理体制をしっかり機能させていきましょう。

■■ まとめ ■■

文書の廃棄によるリスクを低減させるには、
文書管理体制を構築の上、
文書のライフサイクルの管理と正しい知識の伝達を行いましょう。
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