誤廃棄の事例紹介とその原因・解決策

中央官庁や自治体など様々な機関における誤廃棄の報道が後を絶ちません。 今回は誤廃棄の事例を紹介し、それらの原因と対策について考えてみたいと思います。

事例①

毎日新聞2015年12月19日 東京朝刊 ■アスベスト 関連文書6万件を誤廃棄 厚労省が全国調査

厚生労働省は18日、各地の労働局や労働基準監督署が保有するアスベスト(石綿)関連文書計約6万4000件を誤廃棄していたと発表した。保存期間に関する内規にあいまいな点があったことなどが原因。石綿健康被害の労災認定は、別の調査資料などで対応できるため支障はないという。  廃棄された文書は、石綿を使っていた事業所への指導内容を記録した文書や除去業者が作成した工事計画書など。全都道府県の労働局でミスがあった。  大半は、主要部分が電子データで残されていたり、現行基準では保存が不要だったりしたが、約2900件は石綿被害の検証のため残すべき文書だった。  厚労省は2005年12月、社会問題化していた石綿被害の検証のため、関連文書は通常の期間を超えて保存するよう各労働局などに通知した。しかし、対象が不明確な上、データ入力すれば不要との認識が現場にあり誤廃棄が広がったという。7月、京都労働局の点検で誤廃棄が発覚し厚労省が全国調査した。

事例②

2015.12.29 産経ニュース ■岩槻消防署で火災調査書など紛失

 岩槻消防署(さいたま市岩槻区)は28日、管内で発生した平成17、18年度の火災調査書全48件と17年度の救助出場報告書全102件を紛失したと発表した。文書には氏名や住所、年齢などの個人情報が記載されていたが、現時点で流出や悪用は確認されていない。  同消防署によると、両文書は年度ごとに段ボール箱に入れ、敷地内にある倉庫で施錠して保存。19年1月の火災に関する書類を確認するため、22日に18年度分の保存箱を探したところ見つからず、17年度分も紛失していることが判明した。  両文書の保存期間は10年だったが、18年度に救助出場報告書の保存期間のみが5年に変更されたため、24年度に誤廃棄した可能性が高いという。

事例③

毎日新聞2017年4月20日 東京朝刊 ■千葉県文書館 公文書の重要さ、理解不足で誤廃棄

 千葉県文書館(千葉市中央区)が2016年、戦没者名簿や遺族台帳など第二次大戦の関係文書約500冊を廃棄し、うち91冊は県の内規に違反した廃棄だったことが明らかになった。 (中略) 県によると、廃棄対象文書のリストアップは定年後に再任用された職員1人が行った。その後、課長を含む4人による判定会議で、リストに問題の91冊が含まれていることに気づいたが、廃棄対象から外すことを怠ってそのまま作業を進めてしまった。元の所管課の再チェックや文書館の再々チェックでも見逃したという。ミスが重なった原因について県は発覚を受けた7日の記者会見で「分からない」と繰り返した。  専門スタッフの不在も一因だとみられる。文書館の目黒敦館長によると、リストを作った再任用職員と判定会議のメンバー計4人はいずれも公文書管理の専門知識がなかった。文書館は16年度に専門職員1人を配置したが、更に研修などで職員の資質向上も目指す予定だ。文書廃棄の判断にあたっては第三者に意見を求める仕組みの導入を検討している。

事例④

産経ウエスト2017年7月20日  ■個人情報3200件を紛失 名古屋市消防局、誤廃棄かhttp://www.sankei.com/west/news/170720/wst1707200076-n1.html

(名古屋市消防局は20日、救急搬送した病人らの個人情報が書かれた文書約3200件を紛失したと発表した。情報の悪用は確認されていない。誤って廃棄したとみられ、管理が不適切だったとして関係者の処分を検討している。  市消防局によると、紛失した文書は平成24年に作成され、港消防署稲永出張所に保管されていたもので、病人やけが人の氏名や住所、既往歴のほか、診察した医師の氏名などが書かれていた。  今月6日、個人情報の開示請求があった文書を確認しようとした際、紛失に気付いた。既に関係者に謝罪している。外部からの侵入は考えにくく、誤って溶解処分した可能性が高いとしている。  市消防局総務課の松永陽一課長は「心配と不安を与え、深くおわびする。文書管理の研修を実施し、再発防止に努めたい」としている。

事例⑤

Security NEXT – 2017年7月14 ■岩手県内2労基署で個人情報含む文書を紛失

花巻労働基準監督署や宮古労働基準監督署において、個人情報含む監督関係書類が所在不明になっている。岩手労働局によれば、両監督署で合計8社分の監督関係書類が所在不明になっているもの。監督指導に関する監督復命書、事業場に公布した指導票控え、事業場から提出された是正報告書などで、代表者と労働者の氏名や賃金支給額などが記載されていた。6月2日、花巻署において2014年度に実施した2社分の監督関係書類が紛失していることが判明。ほかの年度の書類を点検したところ、あらたに2社分の紛失が明らかになった。花巻署の紛失を受け、13日から同局の管内におけるすべての労働基準監督署において書類の一斉点検を実施。宮古署で4社分の紛失が判明した。いずれも不要書類と一緒に誤って廃棄した可能性が高いと説明しており、各署長が対象となる企業に説明と謝罪を行った。

原因と対策

5つの事例を紹介しましたが、 すべてに共通して原因として考えられるのは、 端的に言えばヒューマンエラーです。 ヒューマンエラーで片づけてしまうと対策が立てにくそうですが、 そんなことはありません。 ヒューマンエラーが起こるのにも原因があり、 エラーを減らす対策もあります。

ヒューマンエラーを通じて起こった誤廃棄の原因を考えてみます。 すべての記事に原因が明確に掲載されているわけではありませんが、 誤廃棄の主な原因は概ね以下のようなものです。

・文書管理全般に対する教育の不足 ・廃棄時のチェック機能の不全 ・保存期間などのルールが曖昧またはわかりにくい ・(ルール変更時における)コミュニケーション・連携体制の不足

これらの原因から導出される対策は以下のようになります。

①教育の実施

文書管理に精通した人材がいない場合は、外部の専門家による研修を行うなど、 教育を定期的に行うことが必要です。 教育には大きく2つの意味があります。

・文書管理に対する意識づけ

・文書管理の知識の習得

教育によりどのくらい意識づけができているかを定量的に判断することは困難ですが、 研修の中で、文書管理を行う目的や重要性、文書管理を通じて得られるメリットなどを共有することで、 意識を定着させ、意欲を高めることができます。

また知識の習得については、ルールの理解と実行方法(実技)の習得といった意味があります。 公文書管理の杜撰さが日々報じられておりますが、 2017年7月6日の東京新聞の記事によると、 全省庁を対象に国立公文書館が実施している研修の受講者率は、 たったの2%なのだそうです。

日々報道されているようなインシデントの発生原因には、 このようなことも影響していると思われます。

内部ルールをきちんと理解して実行するには、教育の制度化は欠かせません。

②内部体制の構築

先述の誤廃棄発生原因のうち、 ・廃棄時のチェック機能の不全 ・(ルール変更時における)コミュニケーション・連携体制の不足 への対策に該当するのが内部体制の構築です。

ルール通りに運用されているかのチェック体制や、 様々な伝達情報を連携するには、 文書管理に関する権限や責任を明確にした体制構築が欠かせません。

③文書管理ルールの精緻化

文書管理ルール(規程やマニュアル)の精緻化とは、 2つの意味があります。

・詳細に記述する

・わかりやすくする

先の事例のように、ルールが曖昧なために発生した誤廃棄もありました。 特に文書種別ごとの保存期間のルールが曖昧ではいけません。 これが曖昧だと、人の解釈によって廃棄時期が決まってしまう恐れがあるためです。 報道されている「森友学園問題」や「「南スーダン日報問題」も、 文書の保存期間が曖昧であったがために、 保存期間の解釈が何通りもできてしまい、疑惑を生む要因となっています。

またルールは、誰が読んでもわかりやすくすることも重要です。 特にマニュアルは実行レベルをサポートするものなので、 極力専門用語などは使わず、親しみやすい表現になるよう工夫することで、 みんなが理解し、実行しやすいものになります。

今回は誤廃棄を例に挙げましたが、 文書管理にまつわるインシデントは誤廃棄だけではありません。 情報漏えいや紛失、誤送付など様々ですが、 やはりどれも原因の多くはヒューマンエラーによるものです。 ヒューマンエラーにも、起こしやすくしている原因と事前に行える対策があります。 文書管理関わるインシデントが組織に与えるダメージは甚大です。 未然に防げるよう対策を講じましょう。

コンサルティング事業部/鈴木

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