ナレッジマネジメントを継続的に行っている組織は、人も育ちやすく、生産性も向上します。ここでは、ナレッジマネジメントを作り育てた事例を紹介します。
ナレッジマネジメントを育てていったある組織を紹介します。その組織はA社の顧客サービス部門です。
■A社のサービスとその体制 ・ビジネス型:BtoB ・サービス対象:一般企業の研究開発部門 ・サービス内容:ハードウェアソフトウェアを組み合わせた情報サービス基盤を提供 ・組織体制:20人
■始めは一人の「困っている」からだった この組織では、そのサービス内容から広い知識が求められます。ハードウェア、ソフトウェアを組み合わせたサービスのため、双方の知識やそれらに付随する知識が求められます。例えば、ネットワークの知識や情報セキュリティの知識、また、お客樣の研究内容もある程度まで、同然業務の流れの理解も必要です。
どの会社にもあることですが、新人を入れても広い知識が必要なのでなかなか独り立ちができません。独り立ちできないので、先輩たちがお客さまのところへ奔走します。とすると、会社に戻るのは夕方以降でジックリ教育する時間がありません。
社内では基本的な教育の担当者がいるものの、実戦に出て行くためにはお客さま事例などの教育が必要です。 そして、結局は、できる先輩にお任せ状態。「教えてください。」ならまだしも「やってください。」も出てくるようになってしまいました。 そんな仕事ができるYさんは、最初は新人さんたちに教えてあげたい気持ちもありましたが、積み重なっていく仕事に追われる日々になりほとんど余裕がなくなってしまいました。 ナレッジマネジメントの第一歩は、そんなYさんの発案から始まりました。
「部門でナレッジサイトをつくろうよ」
Yさんは上司に「私が最初はやるんで、自分一人でつくります。あとは、メンテナンスフリーでみんなでやりたいんです。」と言って共有サイトを作成しました。
A社は、Yさんのいる顧客サービス部門を主軸としているため、早くから顧客情報の管理体制には力を入れていました。顧客情報や対応状況は以下のようにデータベース化、あるいはファイリングされていました。
①基本情報データベース ・顧客の基本情報(名称、住所、電話番号、FAX番号、担当者、メールアドレスほか) ・サービス導入情報(導入時期、導入製品) ②顧客対応データベース ・顧客訪問履歴 ・電話、fax、メールなどの対面以外での対応履歴 ・要望事項、クレーム対応 ③文書ファイル ・顧客毎にファイリングされた紙文書(契約書、作業報告書)
これらに加えて、Yさんはナレッジサイトの作成を試みました。
Yさんは、社内で顧客の基本情報や対応についてデータベース化されているにも係わらず、新人さんたちがうまく運用できていない点について探りました。
■検索できても体系化して確認する手段がない データベースの構築は検索を容易にするが、その分野に不慣れな場合は何をキーワードにしてよいかもわからない。新人さんたちは、まだ、頭の中に仕事の体系ができていないことが多伊みたいだ。、情報全体を俯瞰できるようなものが必要ではないか とYさんは考えました。
ナレッジサイトは、当然ツリー構造にして情報にたどれるようにしました。 ①部門議事録の共有 ②業務マニュアルの体系化 ③技術マニュアルの体系化 ④ニュース記事の回覧 ここにあげた大項目は、ファイルサーバーでも共有されていた情報でしたが、なかなか探し出せないという不便がありました。実ファイルはサーバーにあっても、サイトからアクセスすることによって必要なものにすぐにアクセスできるようになりました。
この4タイプに仕事の情報共有や属人化について、日頃考えていることを聞いてみました。
・このサイトが起ち上がった頃に産休明けで戻って来たメンバー(30代女性電話サポート対応)「産休取る前に比べて、自分で勉強しやすくなりました。」
・入社3ヶ月の新人メンバー(20代男性 顧客訪問対応)「マニュアルが探しやすいので、お客さまのところへ行く前にチェックして印刷して持っていったりしています。」
・Yさんの上司(40代男性 管理職)「メンテナンスフリーの発案がよかった。そうでないと誰も手を出せなくて、管理者以外は提供されるのを待つだけになってしまう。こうした方がいいという意見がどんどん出るとよい。」
Yさんの上司の感想では、「メンテナンスフリーでみんなでやっていけばよい」とのことでしたが、実はこれがくせ者でした。だんだんと使いづらくなってきたのです。
もともとこれは、Yさんがその時に部門の仕事をYさんなりに体系化して作成したものでした。時間とともに仕事は変わっていきますし、メンバーの認識もだんだんずれていきます。
せっかく、Yさんが作成したナレッジサイトが荒れてきてしまったことを危惧した上司は、ナレッジ一番使用しているメンバーWさんに話して、維持継続に一役かってもらうことにしました。
①ナレッジサイトに掲載する基準を定める。 ②定めた基準を実行する体制を構築する。
Wさんは、メンバーにヒアリングをして基準案をまとめました。また、見直し時期やその方法の実行案も作成しました。
A社は毎年、ナレッジの棚卸しを実行して、新鮮な情報の入れ替えを行っています。また、この入れ替え時に、新しい情報技術の検討も行うというプロセスも加え、生産性の向上に役立てています。
■ナレッジマネジメントに関する記事の一覧はこちらです。
コンサルティング事業部/石川
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