契約書の管理と保管:紙と電子の課題を解決しリスクをなくす

2025-12-12
組織が取り扱う文書の中でも特に重要な契約書は、特別な管理が必要です。今回はその管理方法や保管について課題から解決策を解説します。

契約書の管理と保管に悩む企業の現状

文書管理で取り扱う文書は、「業務上作成または取得した文書」が全てカバー範囲となりますが、その中で契約書は全ての会社で重要な文書と位置づけられています。また、その取扱い量も多く保管期間も比較的長いことが特徴です。また、定期的に閲覧が必要なことも多く検索性も求めらます。

このように、重要である一定の件数があり、さらには利用頻度が高い契約書ですが、その管理や保管につい課題があります。

契約書の管理と保管の課題

以下、弊社がよくお客様から相談される課題を見てみましょう。

物理的な保管スペースが限界

紙の契約書がキャビネットに入らない。書庫の面積が際限ない。

更新期限のチェック漏れ

更新期限を業務担当にチェックを任せているが、管理されているかは不明。

検索に時間がかかる

必要な契約書を探すのに時間がかかり、業務効率が著しく低下している。

紙と電子契約書が混在

目的の契約書が紙か電子かを調べた上でアクセスしているため、効率が悪い。また、管理する人も違う。

これらの課題は、全社的な効率の悪さに直結しています。

この記事では、これらの課題に対して、リスク回避検索性向上、そして業務効率化を実現するための方法を解説します。

契約書の管理は多くの企業では総務部で行われていることが一般的ですが、その利用は全社的な範囲に及びます。本記事は、以下のような部署の契約書に関わるすべての方に役立つ内容となっています。

  • 総務・経理部門: 期限管理や保管場所に悩んでる。
  • 法務部門(新人・若手含む): 最新の管理手法や全社ルール策定を検討している。
  • 営業部門: 契約締結のワークフローを効率化したい、契約書の閲覧を容易にしたい。
  • 情報システム部門: セキュリティやコンプライアンス対応、システム選定を担っている。
     

契約書管理の目的とリスクの確認

契約書管理で守るべき3つのポイント(法令遵守/ビジネス機会/リスク低減)

まず、契約書管理で特に重要視される3つのポイント(法令遵守、ビジネス機会の保護、リスク低減)について説明します。

  • 法令遵守(コンプライアンス): 法律で定められた法定保存期間を守る。
  • ビジネス機会の保護: 必要な契約情報を迅速に検索し、契約更新や取引拡大の機会を逃さないようにする。
  • リスク低減: 契約期限の管理漏れ、紛失・改ざん、情報漏洩といったリスクを未然に防ぐ。

特に法定保存期間については、最低限知っておくべきルールとなります。

税法では、契約書の保存期間は7年と定められていますが、その契約書が関わる法律によって期間が異なることがあるため注意が必要です。業務に関連する法律で定められた年数の最大年数を保存期限と設定するのも一案です。

まず作るべき「契約台帳」と最小ルール

契約書管理の第一歩は、原本(紙またはデータ)の形状に関わらず、契約情報を集約・可視化するために台帳を作成することです。

台帳にはその契約書からピックアップした項目を入れて作成します。以下は、その1例になりますが、おおよそどの企業でも使用される項目となっています。

項目

説明

契約書ID

契約書1件ごとにIDを付与する

書類名

契約書・覚書・同意書・協定書・確認書など

部署名

当該契約書を取り扱う部署やその拠点

取引先名称

当該契約の相手先の名称

契約書件名

契約書に書かれている件名

締結日

当該契約書を締結した日付

契約開始日

契約が開始される日

契約終了日

契約が終了する日

このような台帳を作成することで、契約書に関する情報が見える化し、属人的な管理から脱することができます。

紙の契約書の特徴と昨今の契約書管理

次に紙の契約書と電子の契約書の違いを見ていきましょう。

「紙」の契約書保管・ファイリングの基本

紙の契約書は法的効力が明確である一方、運用には以下のような多くのコストと手間が伴います。

  • 原本保管の基本的な考え方: 契約の重要度(訴訟リスク、取引金額の大きさなど)に応じて分類し、厳重な環境(金庫、施錠キャビネット)で保管します。
  • 長期保存に適した環境と対策: 湿気や直射日光を避け、物理的な紛失・劣化を防ぐための環境整備が必要です。また、水害や火事などによる焼失を防ぐための対策も必要です。
  • セキュリティ対策: 第三者の不正閲覧・持ち出しを防ぐため、保管場所の施錠とアクセス権管理(誰がいつ入退室したか)は必須です。

紙の契約書の隠れたコストとは?

紙の契約書の運用には、以下のような目に見えない隠れたコストが存在します。

  • 保管スペース:キャビネット代、倉庫代、オフィス賃料の一部
  • 業務コスト:検索時間、ファイリング時間、押印のための出社・搬送
  • リスクコスト:期限管理漏れ、紛失・劣化によるリスク

電子化のメリットとその留意点

電子化をすることで、たとえそれが単なるExcelなどのスプレッドシートとPDFファイルの組み合わせであったとしても、契約書を運用するに当たってはおおきなメリットがあります。以下にそのメリットと留意点を示します。

  • コスト削減(印紙代、保管スペース、郵送費)→ 電子契約で契約締結するには取引先の理解と協力が必要。
  • スピード(締結から保管までのワークフロー加速)→ 導入時の初期設定とルール策定が重要。
  • リスク低減(期限管理自動化、監査ログによる改ざん防止)→ 電子帳簿保存法など法制度の理解が必要。

紙と電子を一元管理する

このように隠れたコストや電子契約の有効性が認識されていることもあり、昨今では電子契約に切り替える企業が増えています。しかし、既に契約が完了してる契約やまだ紙の契約書で運用している組織もあるため、契約書の管理は紙と電子の両方にならざるを得ません。

つまり、多くの企業は紙と電子のハイブリッド管理、つまりは一元管理となります。

 

リスク回避と効率化を実現する一元管理と電子化

紙の契約書と電子の契約書を一元管理をすることで、得られるメリットには以下のようなものがあります。

リスク管理とコンプライアンス強化

更新期限や法定保存期間が明確になります。物理的な集中保管により、第三者による不正な改ざんや紛失のリスクを下げることができます。

驚異的な検索性と業務効率の向上

部署を横断した検索が可能になります。リスト化によって必要項目が引き出されているため項目検索によって検索精度を上げることができるようになります。

コストの最適化と経営資源の有効活用

無駄なコストを削減し、経営資源を有効に活用できます。紙の契約書をまとめて保管することでスペースの圧縮が可能です。

  • 物理的コストの削減: 紙の契約書をデータ化し一元管理することで、膨大な保管スペース(キャビネット、倉庫)や賃料を削減できます。
  • 重複契約の回避: 同じ取引先や案件に対して、複数の部署が知らずに類似・重複した契約を結ぶリスクを回避できます。

契約書管理システム導入のメリット

上記のように、台帳の整備や紙の契約書のPDF化でも様々なメリットが享受できますが、専門システム導入はさらに以下のような効率アップにつながります。

  • リスク低減:期限管理の自動化、閲覧・編集のアクセス権厳格化、紛失・改ざんの防止。
  • 業務効率化:全文検索機能による瞬時な書類発見、部門間の連携強化(営業プロセスの高速化)。
  • コンプライアンス:電子帳簿保存法や個人情報保護法への対応をシステム側でサポート。(アクセス件の設定など)
     

システム導入その前に「管理の仕組み」を整備する

このように契約書管理システムはとても強力なツールですが、導入する前に「管理の仕組み」を整備することをお勧めします。

全社的な契約書管理ルールの構築・徹底

ITツールを導入しても、ルールがなければ結局は属人化します。そうならないように、契約書管理ルールを構築し周知し徹底させるようにしましょう。

役割分担マトリクスの策定

「誰が(Who)」「何を(What)」「どこまで(Where)」管理するかを明確にする。

例:原本の最終保管:総務部、契約内容の登録:締結部署、期限管理の確認:法務部などと役割分担を決める。

情報システム以前の整理

まずは各部門で契約書がどう管理されているか現状を把握し、整理(紙の電子化、紙・電子に関わらず台帳への登録)を行うことが重要です。

ガイドラインやマニュアル作成

検索ルール、保管手順、廃棄手順(データ抹消を含む)を明文化し、全従業員に周知する。

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■■ まとめ ■■

契約書管理改善を見据えたルールの策定

契約書管理の改善は、一足飛びにはいきません。以下のステップで着実に進めましょう。

Step1

現状の課題分析と基本ルールの確立

各部門で紙の契約書がどう管理されているか、契約台帳がどこまで機能しているかを調査し、散在する紙の整理・電子化(スキャン)を進める。

Step2

使用している電子契約書の管理調査

電子署名サービスやクラウドストレージで電子契約書が各部門でどう管理されているかを調査し、管理場所とプロセスを洗い出す。

Step3

ハイブリッドなルールの策定とシステム選定

ステップ1と2の結果に基づき、紙と電子を一元管理するための新しいルール(ハイブリッドルール)を策定する。このルールに基づき、必要な機能を備えた契約書管理システムを選定し、全社展開を目指しましょう。

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文書管理コンサルティング/石川

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