コーポレート系の文書をはじめとした法定保存文書は、文書管理規程の巻末のほうに記載している企業が多くあります。
しかし法定保存文書以外の会社独自、組織独自に発生する文書については、きちんと保存期間を設定していない企業が多くあります。
文書の保存期間が曖昧だと、様々なリスクが生じます。
1.誤廃棄
とっておくべきなのか廃棄してよいのか、文書種類ごとにきちんと保存期間が設定されてないために生じやすい事故が誤廃棄です。
官公庁や自治体などにおいても、保存期間満了前に廃棄をしてしまったという報道がしばしばあります。
官公庁や自治体では保存期間基準は定められていますが、保存期間基準に定められている文書種類の粒度が粗く、どの文書にあてはまるのかが判断できないために保存期間満了前に廃棄してしまうといった事故が起きてしまいます。
2.コンプライアンス違反
文書には法令で保存期間が定められている文書、「法定保存文書」が多くあります。
法令で定められた期間保存していないと、当然のことながら法令違反となります。
トラブルや不祥事が発生した時には説明責任が果たせず、
企業イメージの低下や社会的信頼の失墜という事態に陥りかねません。
保存期間を明確にすることは、リスクマネジメントの観点からも非常に重要なことです。
3.文書の増加
保存期間が定められていなければ保存期間満了のタイミングが訪れないため、文書は年々増加し続けます。オフィススペースの逼迫や倉庫保管コストの増加などを招き、組織への負担が増加していきます。
保存期間をどのくらいに設定すればよいのか迷うところですが、
次に示すような基準を参考に設定するとよいでしょう。
①業務的な価値基準
今後の業務上での価値を考慮して、保存期間を設定します。
たいていの文書は1年以上経過すると不要になると言われていますが、
例えば業務日報や顧客リストなどの業務的記録、顧客向けの提案書やマニュアルといったノウハウに関する記録などは、プロジェクトが完了しても企業のナレッジとしての価値があります。
こうした文書は法律で定められているものではないので、企業が独自に設定する必要があります。
保存期間は組織ルールとして5年程度設定し、保存期間満了時に再度検討して設定するといった運用が望まれます。
②法令対応
法令で保存期間が義務付けられている文書(法定保存文書)があります。
どの企業にも共有して保存が義務付けられている文書もあれば、業種ごとに特有の保存期間が義務付けられている文書もあります。最近では見読性や真実性など一定の条件をみたせば、電子での保存が容認されている文書も数多くあります。
③訴訟のリスク
訴訟リスクに対応するような文書や、係争中の事案に関連する文書は、保存期間が満了しても保存しておかなければなりません。この取り置くことを「ホールド」と言います。
まだ保存期間が設定されていない場合は、訴訟リスクが消滅する期間を設定し、
定期的に見直すことも必要です。
④歴史的価値の基準
企業においては歴史的価値のある文書(資料)があります。
こうした資料を管理し、利活用に役立てる取り組みは、ビジネスアーカイブ呼ばれています。
日本国内においてビジネスアーカイブに取り組んでいるのは、伝統のある大企業がほとんどですが、今後は成長を遂げたベンチャー企業やスタートアップ企業が取り組むことも期待されます。
どのような資料が該当するかというと、
・製品カタログや販促資料など、製品に関する資料
・社内報
・製品開発の記録
・日報
・その他企業の歴史に関する資料(創業時の写真、看板、訓示など)
などなど、これ以外にも多くのものがあります。
こうした資料は企業の歴史を示すものとして価値が高く、後世に伝える意義からも、ほぼ永久的に保存されるケースが多くあります。
こうした歴史的価値の高い資料を、企業は次のような目的で活用しています。
・会社の歴史を知るための資料として活用し、社員のエンゲージメントを深める
→ 新入社員が創業の精神を知る
・過去に直面した問題の解決方法を手本にして、現状打開策の参考とする
→ 会社経営を揺るがすほどの危機にどう対処したかを知る
・企業ブランディングに利用する
→ 過去の製品ラベルやロゴの復刻
これらの基準で保存期間を検討するとで、おおよその目安を付けやすくなります。
文書の保存期間を数え始めるタイミングを起算日といいます。
総務や法務の方はご存じの方がほとんどですが、営業の方などはご存じない方も多くいらっしゃいますので、確認しておきましょう。
保存期間は年度会計の会社であれば、最初に到来する4月1日、つまり会計期首からカウントします。
例えば5年保存の文書の場合、令和2年の6月に作成された文書であれば、令和8年3月(令和7年度末)まで保存することになります。
作成された令和2年もカウントしてしまうと、1年早く廃棄してしまうことになります。
特に法定保存文書の場合は法令違反となってしまうので注意しましょう。
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