文書には法令で保存期間が定められている文書が数多くあり、期間満了を待たずに廃棄してしまうと法令違反となります。
その他にも各種監査や立ち入り検査などの際に対応するための文書や、トラブルなどの際の証拠提出や公開請求などに対応するための文書もあります。
紙文書であれ電子文書であれ、必要な情報をすぐに探し出せない場合、業務効率が低下します。
業務効率の低下は直接的には生産性の低下を招くほか、間接的にはコストの増大や、対応の遅延による顧客離反などを招く恐れがあります。
文書管理が不徹底だと顧客への対応が迅速・正確に行えなくなり、顧客からの信頼を失うといった事態にもなりかねません。
何らかの業務に関連した文書を囲い込んで、特定の人しか文書の在処がわからないといった状態になると、業務が属人化します。
ルールに沿ってきちんと情報が共有されていないと、企業にとって大事な知見やノウハウが埋没してしまいます。
退職者が出た際も、後任者が文書を見つけられないといったリスクも高まります。
さらに業務が属人化すると、組織は人事異動や配置換えにも及び腰になり、ジョブローテーションも活発に行われず、人材育成も停滞して組織が硬直化する可能性もあります。
しばらく文書管理ルールを見直していないと、紙を中心とした業務でルールが作成されていて、電子ファイルや電子メールなどに関する記述がほとんどされていないケースがあります。
現在は文書管理システムやクラウドストレージ、電子契約システムなどを利用している企業も多いため、ファイル名のルール、バージョン管理、アクセス権限、ワークフロー、保管期間、廃棄方法などについてのルールを定める必要があります。
細かなルールを文書管理規程に記述するとメンテナンスが大変なので、細かなルールは文書管理ガイドラインに記述するとよいでしょう。
ルールを見直さなければならないと思いつつも、日々の業務があるためにそうした時間を確保することは難しいのではないでしょうか。
見直しを何年間も検討しながらも、躊躇したまま時間だけか経過しているといったケースも見受けられます。
またルールを見直すに際しては、各部門で扱う文書の種類や業務習慣などをある程度調査しなくてはなりません。
そうした情報を収集した上でルールを定めないと反発の声が出ることもありますし、作成したルールを継続して守ることなどが難しくなります。
どのような点を見直して、どのようなことを追加して盛り込むかなどを考え、文書化するのには相当な時間が奪われるため、なかなか進まないといった事態に陥っていってしまうのです。
まずは既存の文書管理規程をはじめ、情報セキュリティ規則や情報システム管理規程など、情報管理に関する諸規程の内容をチェックします。
全社的なルールだけでなく、各部署で作成している分類基準表や文書台帳、その他ローカルルールのようなものがある場合は、そうしたものも調査対象にします。
また各部署のキーマンを対象にヒアリングを行い、文書管理に関する要望や不満などを収集することも重要です。
文書保存期間や機密区分などについても、法令で定められた文書を除いて実際の利用者たちの声を聞いて、それを反映するとよいでしょう。
こうしたインプット情報を踏まえてルールを作成すると、業務との親和性が高いものができあがります。
文書管理規程やガイドラインなどの原案を作成します。
先の調査でチェックをしたセキュリティ規則や情報システム管理規程などの内容と矛盾の無いように作成することが重要です。
現存のルールを抜本的に見直すのか、部分的な改定をするのかによって、かかる負担は大きく異なります。
当然抜本的に見直す場合はかかる負担は大きくなるので、こちらのテンプレートの無料サンプルを参考にしてみてください。
作成したルールについて、各部署のキーマンから意見などを聞き取ります。
もちろん全ての意見を反映することはできないので、ポイントとなる事項だけピックアップして限定的に対応するとよいでしょう。
あとは現状の業務と大きく乖離した内容や矛盾した内容がないかだけをチェックをして、全社に展開します。
新しくできたルールを知ってもらうために説明会を実施します。動画を録画しておいて好きなタイミングで視聴してもらうのもよいでしょう。
説明会ではルールの説明だけにとどまらず、文書管理の目的やメリットなども伝えて、文書管理の重要性への理解をより深めることも重要です。
ルールは作って終わりではなく、作ったルールを実践してそれを継続しなければなりません。
そのためには組織のメンバーがルールをきちんと理解して日常の業務を遂行しなければならず、ルールがきちんと守られることによって、冒頭で示した「文書管理ルールの未整備寄るリスク」が低減していくことになります。
一度作成したルールは、定期的な見直しが必要です。
完璧なルールなどは存在しませんし、テクノロジーや業務環境の変化などによってルールは変えていかなければなりません。また現場において継続して守っていくことが難しいルールもあると考えられます。
守ることができないルールを放置しておくとみるみる形骸化していき、作成した規程やガイドラインは無力化してしまう恐れがあります。
そうした事態にならないよう、定期的な見直しをするようにしましょう。
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