文書管理規程・ガイドラインを電子文書の視点から考える

2024-2-9
この数年で企業における紙文書と電子文書の割合には大きな変化がありました。このサイトへのお問い合わせもほとんどが電子文書に代わっています。そして、急激に増加する電子文書にルールが追いついていない印象を受けます。今回は文書管理規程や文書管理ガイドラインについて電子文書を視点で解説します。

文書管理のルールはピラミッド型で考える

まず、文書管理のルールである文書管理規程と文書管理ガイドラインについて確認していきましょう。

■文書管理規程

文書管理規程は文書管理ルールにおいて最上位に位置するルールとなります。法律でいうと憲法のようなイメージです。取締役会などで承認されないと変更ができないなど、改変などには組織の上位職の合意が必要になります。また、会社によっては逸脱すれば注意を受けたり罰則が課される場合もあります。

■文書管理ガイドライン

一方、文書管理ガイドラインは文書管理規程の下位に位置づけられます。ここでは具体的な運用方法などを示します。規程は動かしがたいものに留め、ガイドラインは具体的なルールとすることで実情に合わせた改変などがしやすくなり、柔軟な対応が可能です。
また、ガイドラインとなりますので強制力は比較的低くなります。

場合によっては、部門別にガイドラインを元にマニュアルが作成されることもあります。

以下のピラミッド図は、文書管理規程や文書管理ガイドラインの位置づけを示したものとなります。

文書管理ルールのピラミッド図

電子文書の課題にはどんなものがあるか

次に電子文書の課題を見ていきましょう。
よくご相談を受ける電子文書の課題を以下に4つあげてみました。

■電子文書がさまざまなシステムやデバイスに散逸している

電子文書の格納場所がファイルサーバーやクラウドドライブなどの共有フォルダであったり、文書管理システムやワークフローシステムなどのシステムや、あるいは、個人のPCやスマートフォン、ポータブルハードディスク、USBメモリ、DVD-Rなどに保管されている場合があります。

組織全体で電子文書の格納場所が把握しかねるという問題が発生します。

■電子文書を長期に保存する不安

電子文書は紙文書から置き換えられ、電子文書が原本となる場合が増えています。電子文書の長期に保存は紙文書とは異なり、電子文書が記録された媒体やその読み取り装置、ファイル形式やそれを閲覧可能とするソフトウェアに影響されます。

長期保存したときに、文書を確実に閲覧できるようにする必要があります。

■電子メールやチャットツールのコミュニケーションツールでの記録をどう保管していくか

重要なことが記録されているにも関わらず電子メールの保管ルールが定められておらず、チャット情報などの保管や廃棄は個人に任されていて、重要な情報が保存されていない、放置されて漏洩のリスクがもあります。

■Webサイト、ブログ、SNSなどによる情報発信したものを保管していない

Webサイトは時期に応じてバージョンが変わっており、記録としてあえて残さないと以前のものが消えてなくなってしまいます。

また、ブログサービスやSNSサービスを使用している場合、過去の記事はインターネットを通じて閲覧できるため、日常的には困ることはありませんが、サービス業者の方針が変わった時に今までの情報にアクセスできなくなる恐れもあります。

さらに電子文書は紙文書と異なり、モノがないため整理の状態がわかりづらく、ルールがないと特に管理が属人的になるという特徴を持っています。

方針や運用ルールを決めずにシステムやサービスを導入しても、問題は解決しません。導入前に方針や運用ルールを検討されることをお勧めします。


ガイドラインに入れるべき電子文書に関する項目とは?

では、どんなルールを定めたらよいのでしょうか?ここでは上記の問題を解決するためにより具体的なルールを定めるガイドラインに示す項目を説明します。

■■ファイルの保管場所についての記述

ファイルの保管場所は前述で示したとおり、ファイルサーバー、クラウドドライブ、個人PC、DVD-Rなどのメディア、USBメモリなどさまざまです。ルールを定めなければ、個人が自分が便利と考える場所に保管していくことになります。気がついたら、さまざまな会社全体でクラウドドライブを使用していた、引き出しの中にしまい込んであるCD-RやDVD-Rがたくさんある。。なんてことも。。。

これらを防止するために、電子文書格納場所についてその棲み分けルールを定めます。

 

棲み分けの視点を以下に2つあげてみます。

・組織文書と個人文書の視点

組織として保管する共有文書を入れる場所はどこか、個人の作業中の文書や個人のメモ、個人的によく参照するので手元におきたいなどの個人文書を入れる場所はどこかを定めます。

組織の領域には個人文書を入れないことも(またその逆も)徹底させます。

・格納場所の視点

文書が格納される場所は多数あります。文書管理システム、ファイルサーバーやクラウドドライブなどの共有フォルダ、DVD-R等の光ディスクやポータブルHDD,USBメモリなどの保存媒体などがあげられます。

現状どのようなものが使用されているのか、リスクのある保存場所はないかなどの整理をし、それぞれの役割を明確にします。

場合によっては、現状使用されていても禁止とする格納場所もあるかもしれません。

■電子メールやチャットなどのコミュニケーションツールの取扱い

電子メールやチャット等のコミュニケーションツールには最終決定に至るまでの経緯の情報が含まれている場合があります。後々の検証に利用されることがあるため該当するものに対しては保管の検討が必要です。

後々の検証に利用するものを参考までに具体的にあげてみましょう。

・調査結果、提案、企画等の内容についてメール内でコメントや指摘をしたもの

・承認過程、審査過程がメール内に記録されたもの

・メールで外部に問い合わせを行なったものやその回答

などがあげられます。

また、メールを保管する場合はその添付ファイルも合わせて保管する必要があり、その点に配慮したルール作りが求められます。

合わせて、後から整理収集しやすいメールの運用も検討しておきましょう。

検討する場合の参考として、以下に運用例をあげます。

・社内メールでの添付は行なわず、クラウドドライブのURLを示す。

添付ファイルとメールを一緒に保管する必要が無くなります。メールによって複数のPCへのダウンロードを防止することもできます。

・文書を更新する際には当該文書を更新するものとし、メール本文に更新内容を示さないこと

2つの文書を合わせて確認することになると、非常に煩雑となるので避けるようにします。

・メール件名のルールを定める

電子文書の命名規則が非常に重要であるとこのサイトではよく説明されていますが、メール件名はメールを特定する場合に重要な要素となるため、メール件名のルールを組織で定めます。

■公開されている(HPやSNS)についての保管方針

HPやSNSについても保管をするのかどうかもはじめとして、その保管場所や保管のタイミングなどを定めます。

SNSはアップしたものをそのサービスから改めてダウンロードするのがたやすくないこともありますので、要注意です。

以上、特に電子文書で検討すべき点をピックアップしました。

また、電子文書かどうかに関わらず文書管理上で必要な取り決めも押さえておきましょう。

参考資料として、以下より、文書管理規程、文書管理ガイドライン、保存年限表のサンプルのダウンロードが可能です。

■■ まとめ ■■

今回は電子文書の課題を解決するルールについて解説しました。
文書の保管場所の取り決め、電子メールの管理と運用など電子文書の特徴に配慮してルールを検討していきましょう。


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文書コンサルティング/石川

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