電子文書の取扱いを文書管理規程に盛り込むには?

多くの企業では、紙文書から電子文書へその取扱いが置き換わっています。
文書管理規程もそれに対応して修正や追加をしていく必要があります。この記事では、電子文書の取扱いについて文書管理規程に盛り込むポイントを説明します。

電子文書と電子化文書との違い

紙文書と対象をなすものとして、この記事では電子文書という言葉を使いますが、日常的に企業で使用している電子文書(電磁的記録)は、次の2種類に分類されます。
その中の2種類とは、①電子文書と②電子化文書です。

①電子文書
パソコンなどのソフトウェアで作成されたテキストデータを含むコードで作成された文書です。これらは、容易に修正や追加をすることもできますし、内容から全文検索することもできます。

②電子化文書
紙文書などをスキャニングなどで電子画像化した文書で、テキストデータなどを含まないものです。

この記事では、この2つを電子文書として説明しています。

電子文書で確保されるべき事項

電子文書には利便性が高くメリットも多いですが、その反対に紙文書と比較してデメリットもあります。

※電子文書のデメリット
・電子文書を保存しているメディアの寿命が紙文書そのものよりも短い。
・電子文書を使用する場合には、そのためのハードウェアやソフトウェアを要する。
・完全な廃棄には専門知識を要する。


これらのデメリットを踏まえたうえで、電子文書の確保されるべき事項を以下に説明します。これらは、規程などに明記しておくことをお勧めします。

①見読性(けんどくせい)
電子文書の内容がコンピューターなどで、直ちに表示又は書面に出力できるよう措置されていなければなりません。また、いつでも検索することができるために、そのシステムの信頼性・可用性が確保されていなければなりません。

②機密性
電子文書へのアクセスが許可されていない者からのアクセスを防止し、文書の盗難、漏えい、盗み見等を未然に防止するよう、保存・管理されていなくてはなりません。

③真正性(しんせいせい)
文書の記載内容が、真実で正しいことを主張できる要件です。

電子文書は、紙文書よりも利用の点で優れていますが、それは反対に書換え(改ざん・すり替え)、消去などが容易であることを意味します。つまり、改変・改ざん等の事実の有無 が確認・検証できることが必要になります。

既に保管・保存された紙文書の電子化になりますので、大抵は大量であります。
電子化のコストで述べたように電子化以外の可能性も確認し、電子化する対象を絞り込みます。次に電子化の計画を立てます。

①いつまでに
電子化するスケジュールを立てます。大量にある場合は、フェーズを分けて行うのも一つの手です。

②だれが(内製で行うのか、外注か)
その企業の社員で行う内製と外注に依頼する場合があります。

③どこで(社内か、社外か)
②で内製であれば社内で行うことになりますが、外注の場合は文書を持ち出して外注で行う場合と社内に電子化をする場所を設置してそこで作業をしてもらう場合があります。

④どのように(方法)
契約書のように袋とじされたものは、オートフィーダを使うことはできません。どんな方法でスキャンをするのかということも予め決めておきます。
また、特に内製の場合は仕上がりが人によって様々に成りがちですから、仕様を決めてきちんと守ってもらうことも必要です。例えば、カラーorグレースケール、余白の大きさ、解像度、スキャン後のファイル名のルールやファイルサーバーや文書管理システムへの投入ルールなどになります。

電子文書の保管先

文書がよく使用される1年もしくは2年以内の文書の保管について考えてみましょう。紙文書の場合は執務室内のキャビネットになることが通例です。同様に電子文書の場合も一番アクセス数が多い文書となりますので、日常的に利用される参照、修正、保管が容易なシステム上の領域が保管場所となります。
一般的に多くの企業では、決定文書を①文書管理システム、仕掛中や下書きや個人のメモなどを②ファイルサーバーに保管して管理している例がよく見受けられます。あるいは、ファイルサーバーの領域をわけて、決定文書の領域と1次保管場所の領域に分けて管理されている企業もあります。

このような時、どのように使い分けるのかを社員に対して明確にしておく必要がありますので、例えば、以下のようにシステムに保管する文書名を規程などに記載しておきます。

※利用システムごとに保管されるべき電子文書を示す。
①文書管理システム
社内の決定文書、重要文書、掲示、議事録などを保管する。また、外部から収受した重要文書は、その利用のため、電子化して保管する。
②ファイルサーバーシステム
1次保管場所(仕掛中文書、下書き、個人のメモなど)、バックアップ、社内文書の受け渡しに使用する。



電子文書の保存

電子文書を長期にわたり、保管する場合には、特に「見読性」の確保に注意しなければなりません。その企業にとって重要な文書であり保存をしていたにも関わらず、当時のソフトウェアで作成されていたために読めない場合が発生するかもしれません。あるいは、この見読性を保証するために、場所を取る機械を保存する必要があるのかもしれません。

保存のリスクとして3つのポイントをあげてみました。長期的な保存が未来においてどうなるかを考えるのは想像しにくいので、過去を振り返って現代ではどうなっているか考えてみます。

①ソフトウェア
文書を作成したソフトウェアが、長期的に互換性があるとは保証されていません。
MSDOS版のPCで作成したスプレッドシート、データベース、ワープロなどは、現代では完全な形で変換はできません。

②メディア
データが保管されているメディアが長期的に読み取れるという保証はありません。
フロッピーディスクの読めるPCを備えている企業はほぼなくなりました。フロッピーだって、3.5inchだけではなく、5inchや8inchもあります。MDで保存している音声情報はどうでしょう。いつの間にかMDは使われなくなりました。

③ハードウェア
②のメディアが読み取れるハードウェアがなければなりません。
過去に存在したワープロはソフトウェアがハードウェアと1体化していました。このため、ハードウェアが存在していなければ文書を閲覧することはできません。

■長期保存のためのフォーマット

10年、20年と長期に電子文書を保存していくためには、特に適切な管理を行う必要があります。
また、文書の長期保存ファイルフォーマットとしては、PDF/A形式が国際規格のISO 19005として定義されています。

※PDF/Aとは?
---------(Wikipediaより)
目標は、PDFを長期保存することなど、次の3点である。

・電子文書の見かけを、作成・蓄積・可視化ツールから独立にし、時間が経過しても維持できる。
・電子文書の文脈と履歴をメタデータとして記録するフレームワークを提供する。
・電子文書の論理的な構造と意味に関する情報を記録するフレームワークを提供する。
---------

文書をこの形式のファイルで独立させ、他のソフトウェアやハードウェアに依存させないために、フォントの埋め込みをすることや、外部コンテンツの参照などの禁止などの要件が決められています。
このように長期保存のリスクに備えたルールを検討し、規程に組み込んだり、具体的方策をマニュアルに落としこんだりする必要があります。

電子文書の廃棄

廃棄の段階においても紙文書とは異なる条件があります。

■完全な削除を行うルールの明示
DVDなどのメディアに存在する文書に関しては、文書選別の責任者はそのメディアの破壊まで見届けることは可能ですが、サーバー内に保管されている文書の完全な削除の責任は、それとは別のサーバー管理者が行うことになります。時間的にもずれが生じるため、廃棄の責任を規程等に明確に著しておいた方がよいでしょう。

■廃棄の証跡を残す手順の明示
紙文書でも同じですが、廃棄作業の過程の証跡を残します。また、個人情報に関することなど、削除する義務のある情報を削除したという記録も必要です。

■歴史的文書の移管・保管
また、電子文書においても期限の過ぎた文書の中で歴史的に重要だと考えられるものは、それを管理する組織に移管する、または、アーカイブとして別の媒体に保管する場合もあり、この手順についても明示しておく必要があります。

ホールド手順の整備

電子文書について、発生、処理、保管、保存、廃棄のプロセスをたどってきましたが、このプロセスが途中でストップされる場合があります。
それは、訴訟などに関連して保存年限にかかわらず文書を保管する必要がある場合です。
その必要性がある場合、文書管理主幹部門はその範囲を指定し、廃棄をストップさせます。この訴訟ホールドの手順についても明示します。
また、米国では証拠収集制度(ディスカバリ、電子文書はe-ディスカバリ)があり、米国との取引がある企業ではディスカバリに対応する必要も生じます。

これからますます、紙文書から置き換わっていく電子文書について、その特性を踏まえ、もう一度、ルールを確認し、規程を見直してみませんか。
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