文書の信頼性を高めるためのポイント

企業が事業を継続していく上で、利害関係者からの信頼性はとても重要です。 特に裁判などの係争が生じた際、企業の信頼性を証明するものは文書化された情報です。 今回は文書の信頼性向上について考えてみます。

信頼性のある文書とは何か?

どのようにすれば信頼性のある文書と言えるのか? それは文書のライフサイクルと関連があります。

文書のライフサイクルとは以前にもご紹介した通り、 文書が発生してから廃棄されるまでのプロセスです。

文書の信頼性と言うと、作成の時だけの話のように感じるかもしれませんが、 そうではありません。 「信頼性のある文書」となるためには、 このライフサイクル全体のプロセスの中で一定の条件を満たす必要があります。

①発生~処理まで  ここでは登録する文書が正しいことが条件となります。  日常業務の中で正しい手順で作成され、承認を得た文書であることです。

②保管~保存まで  ここでは①で登録した文書に、改ざんやすり替えがされていないことが条件となります。

③保存  ここでは保存期間中に、破損や劣化などによる情報喪失がないこと、つまり機密性が条件となります。

④発生から保存まで  ここではライフサイクル上の各プロセスで、不正アクセスがないことが条件となります。

こうしてみると、文書の信頼性を得るのはやけに難しそうに思いますが、ごくごく当たり前のことです。 つまり文書を正しいプロセスで作成し、 正式文書(ISOでは記録ともいう)となった段階で、 必要な人以外に見せたり触れさせたりせず、 大切にとっておくということです。

裁判で証明する文書の信頼性

以前、弁護士の先生による記録管理に関するセミナーを受講した際、 次のようなことをおっしゃっていました。

「日本人は、赤い印鑑が押された原本しか証拠にならないのではないか?とか、 ただのメモ書きや、印鑑捺印が無い文書は証拠にならないのではないか?と考えている人が多いが、 実はどのような文書も証拠能力はある。 文書の信頼性や法的証拠能力の判断は、裁判官の心証によるものである。」ということでした。

たとえばこのような例があるそうです。

・最近、具合が悪そうな社員Aがいた。 ・総務部門のスタッフがその社員Aと面談し、なるべく早く帰宅して健康に留意するよう指導した。 ・総務部門のスタッフは、その面談記録を手帳にメモした。 ・しかし後日社員Aは倒れ、そのあと会社を訴えた。

このような経緯で裁判になったのだそうですが、 ここでポイントになったのはお察しの通り、 総務部門のスタッフが社員Aとの面談内容を記録したメモです。 会社が社員の健康管理の一環として、1度でも面談をして指導をしたという記録は、 メモ書きであっても裁判官の心証は天と地ほども違うのだそうです。 メモ書きでも十分効力を発揮するということでしたが、 証拠文書に対する心証をさらに良くして信頼性を高めるためのポイントは、 次の4つでした。

①文書(記録)の運用方法や管理方法をルール化する。

②信頼性を向上させる技術を採用する。

③すばやく公表する

④PDCAサイクルにより、監視と改善を図る。

これってつまり、文書管理のことですよね?

正しい手順で作成・承認された文書をきちんと管理し、 欠点があれば順次改善を図っていくという、文書管理そのものです。

先ほどの例で考えると、次のように解釈できると思います。

・社員との面談を定期的(または必要時に随時)行う仕組みがある。 ・面談内容を記録するフォームに正しく記入する。 ・面談記録の承認ルールと保管ルールが確立されている。 ・上の3つのレビューや改善が行われている。

そして電子文書の場合、 さらに電子署名やタイムスタンプなどの技術を採用していれば、 その記録への信頼性はより一層高まることになるということです。

できることからやる

裁判における係争対応を例に、文書の信頼性を高めるための条件についてご紹介しました。 しかし全ての文書にこの条件を充たすような「手当て」を施すことは困難です。 文書の中には軽微なものや一過性のものも存在します。 「組織を守る」という観点で考えると、 文書管理に不備があると、どのようなリスクに対応できなくなるか、関連するリスクやインシデントを洗い出すことから始めるとよいと思います。

<想定されるリスク(例)> ・災害 ・機密漏えい ・係争対応における証拠提出 ・情報公開請求 ・立ち入り検査 ・関連する流通業者の不正 ・監査対応 ・自社に関するネガティブな報道

文書管理に不備があると、これらのようなリスクやインシデントへの対応ができず、 組織を守ることができません。 まずはこうしたリスクやインシデントに直結する文書を洗い出すこと。 そして洗い出した文書に対して、先に述べた4つのポイントにあるような手当てを施し、 文書の信頼性を高められるようなルールを作成し、運用することです。

文書管理には、 「攻め」のための文書管理と、 「守り」のための文書管理があります。

「攻め」とは、 業務効率化や顧客対応力の向上、コスト削減などを通じた収支構造の改善です。

今回は「守り」の話で、 文書管理により文書の信頼性を高め、 組織を守る方策についてご紹介しました。

オフィスで周囲を見渡し、 どのようなリスクがあるかを考えてみましょう。

コンサルティング事業部/鈴木

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