あなたがもしも文書管理システムの担当になってしまったら、前々回は、システム導入以前の体制・制度・ルールについて、前回はデータの整備について考えてみました。
そして、今回は蓄積された文書のデータ化について実現性の高い方法を考えます。
使う人たちが効果を感じられるようにするためにはどうしたらよいのでしょうか。
新しく情報システム導入が決まるととてもわくわくします。夢や希望もわき出ます。対象が文書であれば持っている文書を全部スキャンして、検索用のインデックスをつけた完全なペーパーレスの状態を想像したりしませんか。
しかし、現実的には時間や資源の制約が常にあり、その中から優先順位をつけて適切な対応をすることが要求されます。
では、その「優先順位をつけた適切な対応」とは、どのように考え、どのように実現すればいいのしょうか。
文書管理システムで1つの文書は、2種類のデータで構成されます。1つは、文書そのもののコンテンツデータ、もう一つはそれが何であるかを示したメタデータです。
データ化することに関して、2つの軸「深さ」と「広さ」で考えてみます。
■深さ 1つのデータの詳細の度合いをここでは、「深さ」という言葉で表現します。詳しくすれば深く、粗くすれば浅くなります。
■広さ 蓄積された文書をデータ化するカバー範囲を絞り込んで狭くするのか、多くの文書を対象にして広くするのかを表し、データの数量にも関連します。
この2つの軸の関係で区切り4つのパターンを示しました。
縦軸は深さ、横軸は広さとなります。
①浅くて狭い 調査検討段階ではあり得る形ですが、実用には適しません。
②浅くて広い とにかく大量にデータ化します。
③深くて狭い ある分野だけ、ある部署が使用するところだけを要望に忠実にデータ化していきます。
④深くて広い 理想的な状態ですが、これが時間的資源的に制約があります。
現実的には②と③の間で適切なところを探り、実現していくことになります。これを読んでいる人は、じゃあ、自分の抱えている問題がどの場所が適切なのかどう判断するのか疑問にあたると思います。
②と③の間に当てはめて考えてみましょう。
②と③の間をもう少し細かく見ていくことにしましょう。
例として、「昭和30年代創業の会社の契約書」をデータベース化する場合を2パターンで考えてみます。
■事例A: 平成になってからの契約書は全て電子化する。対するメタデータは契約締結日、顧客名、件名の3項目に絞った。 この事例は、比較的広く浅いものとなります。さらに、
■事例B: この会社には3種類の事業(ソフトウェア開発、ハードウェアレンタル、文房具の販売)があり、古い契約書を閲覧することの多い1つの事業に絞り込むことにした。 対象契約書の事業は、ソフトウェア開発とする。(規模が大きく継続案件も行われることから、閲覧数が高い。) これは狭く深い方の例になります。
以上は、単純な事例になりますが、本格的に検討するとなると、複数のセグメントに分割して、それぞれの対応を行います。
この例の会社は、製品を仕入れて販売している会社で、それらの契約書を得意先の軸(縦)と年代の軸(横)でセグメント化し、どのように対応するかを決定しました。
a.DB化 コンテンツデータとして、契約書の紙面を電子化し、1件ごとにPDFファイルとする。また、メタデータを付与して、文書管理システムに投入しコンテンツデータを紐つける。理想的な最強パターンを適用。 現時点でデータ化されていない契約書に関しては、この範囲に該当すれば、データ化を計画している。
b.DB化メタデータのみ/紙保管 メタデータは作成し、文書管理システムに投入する。コンテンツデータは作成せず、紙のままファイリングし、メタデータのIDと紐つける。
c.DB化メタデータのみ/倉庫(紙)保存 メタデータは作成し、文書管理システムに投入する。コンテンツデータは作成せず、紙のまま倉庫にファイリングし、メタデータのIDと紐つける。
d.PDFファイル コンテンツデータとして、契約書の紙面を電子化し、1件ごとにPDFファイルとし、適切なファイル名を付与してファイルサーバーに投入する。
e.倉庫(紙)保存 メタデータもコンテンツデータも作成せず、倉庫で管理する。年代別に保存箱毎で管理を行う。
時間とコストの制約のある中、現実的に対応したよい事例です。
最後に忘れてはならないのは、データ化の計画とその進捗状況を利用者によくわかってもらうことです。 状況がわかれば利用者も工夫してデータベースを使えます。 こんなこともなくなります。
グループウェアなどに計画や進捗を表しておくなどもよいでしょう。
このように進めて行くためには、やはり計画が大事です。そして計画を作成するためには、状況の調査が必要です。 そして、これらを支える文書管理の体制が必要なのです。
文書管理体制が支えている
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