経営企画部図書室様 アーカイブデータ利用環境構築
(2016年4月より図書史料室に名称変更)
東京海上日動図書室様では、数年をかけて企業アーカイブ資料のマイクロフィルム化・デジタル化を進めてこられました。そして、デジタル化された資料の利用価値が高いことから利用環境構築を検討され、資料データの整備とデータベースシステムの導入、画像加工が可能な環境の構築が行われました。ここ数年間、社内外向けにこれらの企業アーカイブ資料を使った成果物が複数作成されているとのこと。製作の主体である広報部門や人事部門に対して、目的に合わせた資料の選定や史実確認等のサポートを提供しているのが図書室です。今回の利用環境構築は段階的な計画の一つ目で、次の段階では更なるアーカイブ活用と利用者ニーズをとらえた改善を計画されています。
東京海上日動様が所有している企業アーカイブ資料で、今回の利用環境構築支援の対象となった資料を紹介いたします。
①史料 東京海上日動火災保険株式会社様の歴史的資料です。明治から昭和にかけての日本の代表的な実業家で、支配人、取締役会長を務めた各務鎌吉に関する資料や、創業当時からの営業報告書、取締役会議事録、契約書類、社員名簿などから成ります。 文書の他に写真資料も含まれています。 (件数:約450件、画像:約36,000件)
②社内報 東京海上日動火災保険株式会社様に関連する 会社(東京海上、日動火災、東京海上日動)の社内報から成ります。 (件数:約220件、画像:約47,000件)
東京海上ロンドン支店(1898年)
(前列中央が各務鎌吉・前列左端が平生釟三郎)
■計画的デジタル化とマイクロフィルム作製 東京海上日動図書室では、平成22年から数年 にわたり継続して資料のデジタル化とマイクロフィルム化を進めてこられました。
■社外関連機関の寄託 歴史的資料のほとんどは保管設備の整った社 外関連機関に保管されています。このため、 デジタル化をする前は、資料の詳細を確認する必要の発生都度、社外関連機関に行って原資料を閲覧する必要がありました。
利用環境の構築を行う具体的な方策として、 ①資料データの一元管理、②画像とメタデー タの紐つけ、③画像データの整理が行われま した。これらの方策を施した上で、パッケー ジソフトウェアの「まいく郎」を使用して データベースの構築が行われました。
①資料データの一元管理 デジタル化済みの画像データはDVDに入っており、さらに発注単位に箱分けされていました。これらを全て1つのハードディスクにまとめました。
②画像とメタデータの対応 メタデータは主には図書館管理システムで管理されており、画像とメタデータが別々に管理されていることに不便がありました。該当画像にメタデータを対応づける作業が行われました。
③画像データの整理 資料データの分類基準に合わせて物理フォル ダの分け方を検討し、画像データを再構成しました。
④データベースシステム導入 データベースシステムは、パッケージソフトウェアの「まいく郎」を導入し、初年度構成とし て、スタンドアロン型のシステム を構築しました。
データベース構築のイメージ
資料データを整備する段階で、発生した課題について、対応策を決定しルール化を進めました。
①データベースの構築 データベース項目の構成により、史料と社内 報は、別のデータベースで管理することにな りました。また、画像ファイルはJPEG形式 とPDF形式のファイルが混在していました が、利用や管理方法を考慮してJPEG形式に 統一し、ページ管理はデータベース附属の ビュアーで行うこととしました。データベー ス項目名については、この機会に見直し社内 公開を前提に適切な名称に変更しました。
②メタデータと画像データの有無 メタデータと画像データの対応確認の中で、 メタデータと画像データのどちらかが存在しないものが発見され、それぞれ個別に原因を確認し対応が行われました。場合によって は、原資料を確認する必要も発生しました。
③項目値の整備 各項目値について、記述のルールを見直されました。(並べ替えを意識した項目値の桁合わせや項目の連結文字列など)
①資料データの提供 ・スピード 集約されたデータの検索によって、資料データをスピーディに探し出すことができるようになりました。 ・正確性 メタデータ管理を行っているため、資料のキャプションに利用するデータも利用部門に正確に提供することがたやすくできるようになりました。
②データの二次加工 利用者が求めているのは、コンパクトでわかりやすい資料提供とのこと。用途に応じて、マスキングをしたりファイル形式を選択したり、加工をして資料提供をすることが可能となりました 。
ビューワーでのページ表示例
東京海上日動火災保険株式会社は、1879年に日本初の保険会社として創業しました。長い歴史を有していることから、企業アーカイブ資料を多数、所蔵しています。
東京海上日動図書室は損害保険の専門図書館として、保険、法律、金融、経営、災害などの関連分野の資料とアーカイブを含む社内資料を収集・保管し、グループ会社を含む社員、OB、研究者等に対してサービス提供を行っている企業内図書室です。
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/rashisa/story/history/
掲載画像や参考資料、史実の確認などに、アーカイブが活用されています。
**■他部門との連携により見えてきた新たな視点 **
弊社ではここ数年、アーカイブを多用した広告展開や会社案内等の作成が続いています。自社のDNAともいえる会社の歴史への“着目”の傾向は、「アーカイブ」に関する方針を「保管」のみから「保管と活用」へと切り替えたことと無関係ではありません。コトの発端は、社内で話題を呼んだ人材育成ツールのDVD。活用可能なアーカイブの存在が明らかになると同時に、活用を先行させることで生じる問題が顕在化しました。対策として、戦前期史料のマイクロフィルム化とデジタル化を行いました。現物は大事に保管し、デジタルデータを存分に活用するという選択です。
ホームページに掲載しているコンテンツ「東京海上日動の歴史」は、図書室機能とアーカイブ活用の可能性を広げた好事例と言えるかと思います。製作の主体は広報部門ですが、目的に合った資料の選定、史実確認等を図書室が担当しました。部門による視点の違いがうまく作用しました。図書室は資料を整理・保管のうえ適切な資料提供を行うことを役割としていますが、例えば、広報部門は会社の歴史の背景にあるドラマチックな内容を社内外に強力にアピールすることを大事とします。視点の違いから資料の扱いや史実の表現についての見解が異なり、打合せを重ねました。「正確さにこだわりすぎ」「作りたいのは社史ではない」という指摘にはハッとさせられました。一方で、著作権への配慮や「目的や表現したいことに合致する資料はどれか?」という問いへの対応は資料を知る図書室の得意とするところです。「アーカイブをどう使うか?」とアーカイブの管理部門が単独で考えたところで、価値ある資料を発掘したり、アーカイブに新たな用途を作り出したりする機会はなかなか得られません。連携によって、得られることが多々あるのではないでしょうか。
また、今回ニチマイ様にサポートいただいたデータ整備により、把握していなかった不一致・重複等のデータの不備を修正することができました。外部の視点を借りてこそ得られた大きなメリットと認識しています。
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